期限ぎりぎりで免許の更新。
なんでも1月からICチップを埋め込んだ免許証になったそうで。そういう説明も受けるには受けたが、個人情報の保護、という名目で、いろいろこちらとしては都合の悪い情報をあちらの人たちが入力していくんじゃないか、と穿ったりもした。そういうミステリ、そのうち出るんじゃないかな。
交通安全協会の勧誘は、美麗な婦人警官を集めた特殊部隊の任務となっているようだ。しかし、さすがに天下り法人に対する世間の評価が凋落の一途を辿る現在、効果は薄いようだ。見ている限り、誰も納金していなかった。かつては強面の男性が恐喝まがいの声色で勧誘していたように記憶しているが、押しても引いても駄目なんだろうな、もう。
ところで、長椅子に腰掛けて講習の開始時間を待っていたら、怪しげなブロックサインをこちらに向かって送ってくる中年男性を発見。バントなのかエンドランなのか、暗号を共有していない私にはわからず、呆然と眺めていた。しばらく経って、ブロックサインを中断し、バッグの中をまさぐり始める。すると、出てきたのはタバコ。はーん、タバコを探していたのか、(想像上の)帽子の鍔を触ってラジャーの合図を送らないでよかった、と思う一方で、なんにせよ、ここ禁煙なんですけど。
新免許証を財布に収め、免許センターの近くにある母校で、恩師の研究室を訪問してみたら、ゼミ生のレポート指導の真っ最中だった。奇しくも卒論で扱った作家の作品についてのレポートだったので、がんがん話を振られるが、なんせ10年ほど前にちょっとだけかかわった作家ということもあり、自伝的情報が恐ろしいほどごっそりと抜け落ちていることに愕然とする。あまり話が噛みあわず。あの頃、日記も手紙も全部読んだのに。技術は残るが、知識は反復しないと残らないものだ、と痛感。茶を痛飲、関係のない話をして退散。
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法月綸太郎ミステリー塾 国内編 名探偵はなぜ時代から逃れられないのか
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「大人の階段登る」、いわゆる青春ミステリのくくりになると思うが、最終的な解決はどうみてもお子様仕様で、むしろ反・ビルドゥングスロマン的。謎もトリックも解決ももうひとつで、中高生向けの「ゆるミス」として評価するならともかく、それ以上の評価は難しい。なんといっても、ゲームの主催者によるハコの設計に対して主人公は全く無力で、謎解きとも主人公の成長とも全く結びつかないのが痛い。閉鎖的なのに開放的というハコの設定やそれを活かした心理ドラマはよくできているし、探偵―犯人の軸が物語の最終審級ではなくて、その上位にゲームの主催者がいる、というようなメタミステリ的仕掛けもおもしろい。が、いかんせん、主人公その他の人物造型が幼稚すぎるし、展開もあれだし、そもそも犯人役のひとがあの金額を必要とした理由もわからないし、もうひとつ乗れないまま。やっぱり参加者の世代の違いをうまく使わないから、こういう平板な感じになってしまうのでは。ハコ自体に解決が向かうような、そういう展開ではなく、ハコの外にもハコがある、というような無限回廊的結論も、ホラー作家独特の落とし方というより、オチに困って、という感じがする。ハコを設計するなら、ハコに向きあうのがミステリの常套であると同時に作家の矜持のみせどころだし、そこから逃げるのであれば、その理由をちゃんと物語として提示しないといけないような気がするのだけど。これが「このミス」にランクインする理由が全くわからない。ちょっと言いすぎかもしれん。
うしろ二つは、法月のミステリ評論集。「大量死と密室」、それからエラリー・クイーンと春樹を(強引に)結び付けて、本格のフィールドに引きずり込む力技が素晴らしい。この人の評論の文章を初めて読んだが、とてもいい。