太田和彦

 旅チャンネルを観てみたら、太田和彦が肴をつまみながら焼酎を呑んでいた。鹿児島だった。
 空は青々としていて、日は高い。暖簾をくぐって店に入ると「お久しぶりです」「何年ぶりですかね」という挨拶が自然と口をついて出る。何度も通って詳悉した店だけを紹介するからだ。
 カウンターに陣取る。居酒屋の主人と顔と顔をつきあわせて、会話を交わす。通り一遍、店名の由来や店の履歴について語った後は、肴と焼酎の旨さだけを寡黙に描写する。そのまま何事もなく終わる。地味でも凄い番組だと思う。
 「たのもし」文化圏に育ったはずなのに、こういう孤高の酒飲みに憧れる。が、残念ながら、画になるにはまだ青すぎる。
 修行と称して近場の「武蔵」「赤とんぼ」にも行ってみよう。とりあえず来月は松江の「庄助」「かねやす」。