CL準々決勝2ndleg、マンUvsローマ。稀に見る大虐殺。7−1(1st leg 1−2)。
 リーグ戦でもポーツマスに不覚を取り、権勢に翳りの見えるマンUは、トップにアラン・スミスを配し、左サイドルーニー、右サイドロナウド、トップ下にギグス。スミス以外の3人が自由にポジションチェンジしながら攻める。特に補完役ギグスが重要。スコールズの穴はフレッチャー。
 一方のローマは、出場停止のペロッタに加え、試合開始前に急遽タッディが故障で欠場。ダイナモ2人を欠いて、運動量が命のゼロトップシステムがうまくいくかどうか。
 開始10分ほどは両チームとも慎重にパスを回し、あまりカウンターを喰らわないように懐を深くして構えていたので、チャンスらしいチャンスはなし。ローマ側がトッティ他のミドルで若干の見せ場を作るのみ。DFライン前のバイタルエリアを奪い合う展開。神経戦の様相を呈してきたな、と思ったのも束の間、カウンター気味に右サイドからロナウドが抜け出し、中央PA付近に流すと、走りこんできたキャリックが若干足首に引っ掛けるような蹴り方でGKドニの意表を突いて先制。ここから嵐の7分間。得点を奪わなくてはならなくなったローマが少し前がかりになると、もはや砂時計の砂のように一方的な流れになる。スタンドの興奮冷めやらぬうちに、左サイドロナウドからワンタッチで中央へボールが出ると、受けたギグスがこちらも縦へワンタッチ浮きスルー、抜けたスミスがあっさり右隅へ蹴りこむ。舌の根も乾かぬうちに、カウンターで右サイドから抜けたギグスが中央へグラウンダーのスルーパス、走りこんできたルーニーが流し込む。これで3−0。ここまでだったらローマも1点とればまだアウェイゴールの恩恵で勝負になるところだったが、オフサイドギリギリで右サイドを抜け出たロナウドが右サイドを独走、中に切り込んでDF2人を釘付けにし、急遽右に切り返し、ニアサイドにドン。ロナウドのCL初ゴールで、ゲームの帰趨は前半にして決した。
 後半もロナウドキャリックが2点目をとり、さらには故障明け途中出場のエヴラまでもがミドルを決めてしまうというお祭り状態。ローマはトッティがゴール前でキープしながら右に流れクロス、走りこんだデロッシが後ろに戻りながら後ろ向きのまま右のサイドキックで(大変難しい)スーパーボレーを決めて一矢を報いるも、焼け石に水とはまさにこのこと。トッティの笑顔は最後まで当然見られなかった。
 結局、ローマのサッカーの質が1戦目から極端に落ちたのは、出場停止と故障を乗り越えるだけの層の厚さがなかったということか。もちろん、1戦目のようにゲームの入り方に失敗するとドン臭いサッカーをしてしまうマンUが、今回は積極的に前に出ることでゲームの口火を切ったこともあるかもしれない。しかし、メンバーチェンジで、前線からの激しいプレスが息を潜め、マンUに中盤を全く自由にさせてしまった咎は殊の他重い。特にロナウド無人の野を行くがごとくローマDFを切り裂き、次々とスペースを作っていた。スペースを与えたらロナウドを止めるすべはない。1on1どころか3人がかりでもスペースがあればロナウドはやすやすと突破してしまう。もちろん、マンU側も策は講じていた。1戦目ではほとんど見られなかったポジションチェンジを頻繁に繰り返し、的を絞らせない。特にギグスロナウドルーニーとの関係を見ながらバランスをとり、攻撃の核となっていた。守備面ではフレッチャーの獅子奮迅の活躍が光る。かつてはシュートを撃たないと批判されていたキャリックマンU移籍で一皮向けた。エインセとのポジション争いに勝利した貴重なサイドバック・エヴラも帰ってきた。あとはキャプテンであり、右サイドからのクロスやオーバーラップでチームの躍進をここまで支えてきたギャリー・ネヴィルの復帰が待たれるところ。ローマは残念だが、これは事故のようなもの。少なくともベストメンバーで相対すれば、互角以上の強豪であることは証明した。まあしょうがないねえ。