最近読んだ、あるいは読んでいる本の中からいくつか

 

 住基法やウェブ環境の拡大、果ては騒音おばさんなど、昨今話題のプライバシーについて哲学的に考える本。アレントで導入、その後著者専門の法哲学の領域へと分け入る。個人的には権利と義務というか、介入と保護の問題が興味深いところ。最近の人は、自分のプライバシーに介入して欲しくないと思う一方で、プライバシーを守ってくれ、とお上に頼んだりする。守ってくれ、というのは常に介入と表裏一体の可能性があるということ。そこらへんをこねくりまわしているところがおもしろかった。今回の本は、著者の専門にかなり近いところなのではないか。

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 これはしばらく寝かせる。

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 石田衣良を思い出した。文章力も高く、構成も巧みで、ぐいぐい読ませるものの、妙な美意識というかセンチメンタルな自意識が邪魔をする。キャッチーな言葉やキーフレーズが頻出する。このへんも元コピーライターの石平さんと著者が似ているところなのかもしれない。

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 戦国末期から江戸・明治・大正あたりまでを俯瞰して、任侠と武士道の接点を探る。まだ史料が発見できておらず、証明できない著者の仮説も披露。特に男色と男らしさの微妙な影響関係がおもしろかった。

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環境批評の未来―環境危機と文学的想像力

環境批評の未来―環境危機と文学的想像力

 まだ途中なので、内容に関しては口をつぐむ。ソロー学者にしてエコ・クリティシズムの第一人者Lawrence BuellThe Future of Environmental Criticism の翻訳。やや衒学的な傾向のあるビュエルの文章を巧みに訳している。大変な労作だと思われる。またいつか詳しく。ちなみに同書の共訳者が中心となった論文集『エコトピアと環境正義の文学』(http://ha2.seikyou.ne.jp/home/huckleberry/mokuji.htm)が晃洋書房より刊行予定(もう刊行されているのかな?)。

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  http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4764709910.html
『木と水と空と エスニックの地平から』(金星堂)。自然表象とエスニック/人種アイデンティティの関係を問う論文が21本。まだ途中だが、今のところおもしろかったのはReservation Bluesで有名なシャーマン・アレクシーの『インディアン・キラー』における両義性、あるいはダブル・バインドを読みとろうとする論文、「怒りの都市、沈黙の森」。扱っているテキストがまずおもしろそう。またいつか詳しく。

Indian Killer

Indian Killer