絶望ノート
- 作者: 真藤順丈
- 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
- 発売日: 2008/10/24
- メディア: 単行本
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『地図男』よりはだいぶ下で、『RANK』よりは上、という感じか。著者自身も授賞のことばにおいて、これはホラーなのか、と自問自答しながら書いた、といっているように、常識的なホラーの範疇からはずいぶんずれる。映像化したらホラーになるのだろうけど。
家業に関わらない次男の目が読者の視点に近いはずなのに、あまり違和なく他の兄弟と並列されてしまっているために、平板な印象を受ける。もっと行動だけではなく、心理的なギャップがあったほうが、大団円(?)に向かう三兄弟の(異常な)団結が劇化できたのではないか。そして例によってブレスマークがどこにもない。息苦しい。
ファスト風土化された平凡な郊外の中の異常な世界、なのだけどそこに生きる当人たちにとってはそれが正常、という設定も、あまり対比がうまくない。構成力はもうひとつ。
けれど、文体はいい。言葉のセンスがいい。
- 作者: 歌野晶午
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2009/05/01
- メディア: 単行本
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『デス・ノート』+ややサカキバラ事件のようなアイディアは、ネット社会、親子関係、格差社会、教育問題、書くことに伴う責任、現実とリアル、復讐、そしてレノンの「イマジン」などによってゆたかに脚色され、変奏されていく。『世界の終わり〜』や『女王様と私』、『家守』のテーマや手法を借りながら、まったく別の画を描いている。トリックのためだけに奉仕するうすっぺらい物語ではなく、陰影を湛えた立体感がある。いつもながらよくもこんなに醜悪な人間が書けるなあ、と(ポジティブに)感心するが、今回はそうした醜悪さがひとりに収斂せず、縦や横にも広がっていくので、より厚みが増した観がある。叙述トリックで鳴らした『葉桜の季節に君を想うということ』以来、歌野晶午の新境地を切り開く新たな代表作といっていい仕上がりだと思う。