人材難

 石井くんには本当に失望した。なんだ、あの遠くの机に置き忘れた携帯をやおら掴むようなパンチは。かのミッキー・ロークの猫パンチのほうが腰がすわっていたじゃないか。衰えを隠せないうえに調整不十分で青息吐息の吉田に対する有効打が金的蹴りだけ、ってなんだよそれ。
 漫才師の突っ込みは笑いに奥行きを与え、立体感を演出する。石井くんのパンチはねえ、ただでさえ書き割りのように平板で見え透いた斯界の青写真を紙やすりで削るようなもんだよ。頼む、ちらっとでいいから、次回は向こう側の景色を見せてくれよ。
 胸躍った瞬間が青木の腕折りと品性下劣さぐらい*1というのは、もういったいどうしてくれよう。すっかり飼いならされた元狂犬・柴田に、お決まりのタックル失敗で沈没する藤田。どこかで、何回も観たよ。マサトの過去の映像と一緒に、間違って再生しちゃったんじゃ。
 日本の総合格闘技界は退潮傾向著しい。底が割れていないのは、グランプリ開幕戦でピーター・アーツが負けた瞬間に「オーマイガー」と叫んだノリカ様、それと不良の喧嘩祭り「The Outsider」ぐらいのものだ。巨人ズールを首筋へのワンパンチで屠殺したヒョードル、ボコボコにされながらも起死回生の三角締めを狙うノゲイラデコポンみたいに歪に腫れ上がった顔で恥ずかし固めを狙う桜庭がああ懐かしい。ああ、桜庭はまだいたのか。
 ああそうか。ということはやっぱ時代はプロレスなんだな。早く通常国会始まんないかな。

*1:青木が顔っていうのは、やっぱり地上波では難しいのだろうね。