レンズと窓ガラスの向こう

 昨晩から今朝にかけて12時間寝たはずなのに、朝食を食べてからしばらくして4時間寝た。一日が40時間ある人の生活に似ている。
 放牧が終わって頭は冴えている。
 冷やかな雲の群れがいくつかの断片に割れている。乾いた陽の光が20階建てのマンションの背中に引っかかった翳を鋭角に切りとっている。避雷針は釈迦の指のように天を衝いている。
 鴉ががーがー啼いている。遠くを車の走行音が行き交う。こたつのファンが静寂(しじま)に温かいバターを塗る。
 首の軋みも肩甲骨の悲鳴もパリコレモデルの腰回りのようにか細い。
 助走は十分、新しい日々が始まる。