CL準決勝2nd leg ミランvsマンU

 このところエインセ、ブラウンの急造CBコンビで戦ってきたマンU。毎試合のように失点を重ねるも、攻撃陣の奮起でどうにか凌いできた。今日はレギュラーCBヴィディッチが肩の脱臼から復帰。エインセが左にまわり、右にオシェイ、中央にヴィディッチ、ブラウンというバックライン。スコールズキャリックフレッチャーで中盤を固め、ルーニーロナウドギグスの3トップでカウンターを狙う。懸念は守備陣。果たしてぶっつけ本番のヴィディッチがどこまでやれるのか。
 一方のミランは、インザーギが復帰。38歳マルディーニの離脱は痛いが、ガットゥーゾも無事にスタメンに名を連ねる。絶好調カカに曲者インザーギを組ませ、その後ろのスペースでセードルフが仕事をする。ガットゥーゾアンブロジーニがサイドに追い詰めたり、中央に閉じ込めたりする水門の役を中盤で果たし、門番役ピルロが中央に鎮座する。オッド、ネスタカラーゼヤンクロフスキの最終ラインは閉じたり開いたり変幻自在の最後の砦。懸念は1st leg終盤に露呈したスタミナ切れ。カカがゴールの期待を一手に引き受ける。
 結果は3−0。ミランの圧勝。マンUは何もできなかった。準々決勝の1st legでのローマと同じく、いやそれよりも完璧にミランがスペース管理を徹底した。セードルフまでの前線の3人が主にパスコースを限定し、中盤のガットゥーゾアンブロジーニキャリックスコールズに当たりをつけ、厳しく縦を切る。マンUの攻撃は大体この2人を経由するので、ここを狙うのが一番効果的。万一ロナウドギグスまでボールが渡っても、慌てず騒がず2人が不即不離のディフェンス。ドリブルを止めるのではなく、ドリブルできるスペースを限定する守備。ここらへんはリール・ローマが採っていたロナウド対策を応用した印象。ルーニーに至ってはネスタが厳しくマーク、ほとんどボールに触れさせない。マンUはピンチを凌いでも、攻撃を組み立てる前に取られ、またピンチに陥るの繰り返し。やがて単純なトラップミスやパスミスが頻発するようになり、自滅の道を辿る。問題はベテランの多いミランの運動量がどこまで続くかだったが、前半2点を奪った余裕でこれもクリア。後半、マンUが本来やりたかったであろうカウンターサッカーをミランは悠々と展開。前半のようなプレッシングサッカーを時折織り交ぜながら、うまく試合をコントロールしたミランの完勝。
 もちろん、試合前から試合を通じて続いた豪雨の影響でピッチが滑りやすくなっていたせいで、マンUのパスサッカーに狂いが生じたのも事実。ただ、それはミランも同じ。ミランは不測のバウンドをするようなパスを極力省き、足元に正確に預け、時にはトラップの難しいグラウンダーではなく、低いライナー性のパスを選択し、巧みにパスを操っていた。こういうピッチでは、スペースにボールを出すと、ボールが滑り、受け手が追いつけない可能性が高い。ミランは、パスで受け手を走らせるのではなく、受け手が予め豊富な運動量でスペースを確保した上で、足元で受けていた。この辺りが経験か。マンUはいつも通りの華麗なパス回しに拘泥し、スペースに出して流動性を演出しようとしていたが、鋭く伸びるパスとスリッピーなピッチに足を滑らせる受け手の呼吸が合わず、攻撃の流動性どころか停滞を招いた。足元に出すか、スペースに出すか。経験の差だろうか。
 マンUは後半のほとんど絶望的な段階になってようやくロングボールを使い始めた。しかし、ミランがあれだけ前に出てきて、マンUの中盤を潰しに来ていたゲームの序盤にこそ、ロングボールを多用すべきではなかったか。攻撃そのものに直結するかどうかは別としても、少なくともミランの中盤を上下させることはできたはず。中盤のスペースを一旦広げることができれば、スコールズキャリックが前を向く余裕も生まれる。何よりも、ミランのボール奪取の標的が絞りづらくなる。しかし、マンUはいつものサッカーにこだわりすぎた。今回ばかりはカカにやられた、攻撃にやられた、という評価は当てはまらない。ゲームプランの差。適応力の差。そして、ミランの攻撃的な守備こそが3点を奪い、また90分間試合をコントロールする余裕をミランをもたらした。攻撃は最大の防御、いや防御こそが最大の攻撃なのである、とかなんとかいう頭の悪いシメ方でどうもごめんなさい。