大晦日

 昼ごろ到着。祖父宅で『風林火山』総集編。4時間やそこらで一年分のあらましを把握できるのはありがたい。信玄役の歌舞伎役者の影響か、全体的に歌舞伎風の印象。エンドクレジットにカタカナで現われる「ガクト」に存在感。演技もいけてるんじゃなかろうか。謙信が白馬に乗っていたなんてことは、ないはずだけど。魔さか。
 祖父を囲んで年越し。のため、チャンネル選択争いの趨勢は必然的に紅白側へと傾く。
 紅白製作者は、新しい血を入れて若者に配慮するよりも、確実に視聴してくれる懐古派に焦点を合わせた方がいいだろう。紅白出場がステータスになる時代はとうに終わった。公共善=視聴率ではないのだから、客寄せパンダを並べるよりも企画力で暗数を相手に勝負すればよい。ひとりひとりの求心力は衰えた往年のスタアも、配置次第ではまだまだ十分に輝く潜在力を伏流させている。なにより、そういうベテランに限って安定した歌唱力を持っている。阿久悠特集で押す終盤はよかった。
 争覇の野心は放棄しつつも、覇権者の温情に与るくらいのしたたかさは持ち合わせているので、ちょいちょいどさくさにまぎれて格闘技側を覗く。
 船木―桜庭。肉体に対する配慮はさすが、闘志は一寸も揺るいでいない船木なれど、当て勘や力点・作用点を見抜く透視力の衰えはいかんともしがたい。
 ヒョードルチェ・ホンマン。殴打の正面衝突を期待したが、当然ながらグラウンドになると王者に千日の長あり。攻めるだけ攻めさせて、サンボ仕込の腕ひしぎで仕留める。完全無欠。総合で負ける姿は想像できない。
 goal to goalならぬdown to down、そしてノックアウト、という衝撃の結末を迎えた三崎―秋山戦がベストバウト。妥協のない打撃戦の果てに、これ以上ない明白な決着。昨年一年、ヌルヌル騒動の渦中に、というより渦の淵源そのものだった秋山の渦潮に分水嶺を穿つ衝撃KO。彼の場合、勝ち続けるよりは一度負けてゼロからやり直す方がいいでしょう。
 忘れていた。人生で初めて松坂牛を食べた日。陳腐だが、肉の味がした。うまええ。
 キアンティ・クラシッコ 2005は、収穫時の気候のせいか、いまいち。ぼやけている。輪郭がはっきりしない。まあまあだけど。