CL準決勝2nd leg リヴァプールvsチェルシー

 欧州随一の分厚い選手層を誇るチェルシーといえど、怪我人続きの苦境が深刻さを増すにつれ、徐々に閉塞感が漂うようになる。プレミアの覇権を事実上諦めることになったチェルシーは、弱り目に祟り目、守備の要リカルド・カルバーリョをも故障で欠くことになり、本日は今シーズンチームの穴をユーティリティ能力で補完してきたエッシェンがCBに入ることになった。加えて、公式には故障ということになっているが造反が噂されるシェフチェンコもベンチ外。今シーズン、オプションとして使われてきた3トップを採用。右にジョー・コール、左にカルー、中央にドログバ。中盤はミケル、マケレレランパードが並び、フェレイラ、テリー、エッシェンアシュリー・コールでバックラインを形成。高さで見劣るエッシェンがどのように相手の高さに対抗するか。そして故障明けのロッベンがベンチにいるとはいえ、切り札となるカードに乏しいモウリーニョがどのように動くのか。
 対するリヴァプールは、来季のCL出場権を既に確保したリーグ戦をほとんど控えメンバーで戦い、休養十分。シソコを欠くとはいえ、ほぼベストの布陣。高さに対するチェルシーの一抹の不安を見越してか、カイト、クラウチの2トップ。左にゼンデン、右にペナントが張り、センターにジェラード、マスチェラーノが控える。バックラインは、左からリーセ、アッガー、キャラガー、フィナンというベストの面々。ベンチにスピードスター・ベラミ、仕事人・シャビアロンソ、サイドの崩し屋・ゴンサレスらが陣取り、懐はチェルシーよりも深い。
 試合開始当初は、やや激しい展開になりかけるも、むやみにイエローを乱発しない冷静なジャッジに呼応してか、徐々にまったりした展開になる。左サイドのFK、中央マイナス気味にグラウンダーのボールを入れて、ノーマークのアッガーが絶妙のコースにシュート。前半20分ほどでリヴァプールが先制、2戦合計タイスコアに持ち込んだ。とはいえ、チェルシーに1点喰らえば全てが水泡に帰す状況だけに、リヴァプールも迂闊に前に出ることはしない。マスチェラーノが中心となってチェルシーの中盤を寸断し、的確なロングパスを前線に送り、安全に攻める。中盤でボールを失わないことを優先するリヴァプール。他方、チェルシーアンフィールドの独特の雰囲気に飲まれたか、あるいは連戦の疲れからか、なかなか速攻に移れない。攻撃に人数が割けない状況が続き、次第につまらないパスミスでボールを失うようになる。特に左サイドのアシュリー・コールのオーバーラップを有効に使って相手を崩す傾向にあるチェルシーだが、今日はほとんどそんな場面もなく、ひたすら前線の個人技頼み。ランパードもほとんど消えていた。ミケルに至っては、ほとんど攻撃の才能を感じない。もちろん、リヴァプールも、クラウチが相変わらず頼りない。カイトは前線の守備に忙殺され、なかなかシュートまで至らない。必然的に両チームともほとんどシュートを撃てない、緊迫した神経戦の様相を呈する。
 後半、両チームとも僅かながらチャンスを作る。特にリヴァプールは、カイトとクラウチが高さで決定的な場面を何度か演出する。が、拮抗した展開は変わらない。ベニテスは、ペナントに代わってシャビ・アロンソを投入し、ジェラードを前に上げて勝負に出るが、流れを完全に手繰り寄せるまでには至らない。
 遂に延長へ突入。モウリーニョジョー・コールに代えてロッベン、カルーに代えてライト・フィリップスを投入し、とりあえず限られた選択肢の中で手を尽くす。しかし、状況は変わりない。それどころか、カイトがシャビ・アロンソのミドルのこぼれ球を詰め、ゴールを割る。が、僅かながらオフサイドチェルシーサイドは肝を冷やす。ベニテスもほとんど働かなかったクラウチを下げ、ベラミを投入するも、あまり大勢に影響はなし。PK要員としてチェルシーはジェレミ、リヴァプールはファウラーを投入し、終了。PK戦に突入する。
 こうなるとホームチームが圧倒的に優位に立つ。レイナが2本ストップし、4−1でリヴァプールが勝利。4冠を目指したチェルシーは、連戦の疲れからくる疲弊に負けた。ゲームプランとしてはカウンターを狙う予定だったのだろうが、リヴァプールはリスクを犯さず、長いボールを多用して攻め、セットプレーで同点に追いついてきたのだからどうしようもない。打つ手もないまま、時間だけが過ぎた。他方、リヴァプールアウェイゴールを奪われると全てが終わってしまうため、積極的に攻める姿勢を最後まで見せなかった。左サイド、リーセのオーヴァーラップが殆ど見られなかった点に鑑みて、バランスを崩すことを極度に恐れたのは誰の目にも明らかだろう。緊迫した好ゲームでした。それにしてもPK戦は残酷だなあ。