『アメリカ文学にみる女性改革者たち』

 

アメリカ文学にみる女性改革者たち

アメリカ文学にみる女性改革者たち

 津田塾系の論集。よくまとまっている。論文の寄せ集めではなく、一冊の著書として読める。閉鎖系の研究会の利点だろう。時代は十九世紀初頭から二十世紀初頭まで。チャイルド、セジウィック、ストー、ショパン、ギルマンといった有名どころから、ファニー・ファーンやジェイン・アダムズと、通例、文学系では扱われない人物まで。
 メアリー・フリーマンの結婚小説に老人介護という裏テーマを読む須藤論文が秀抜。アメリカにおいてケアの問題系は子どもや障害者等に関心を集中させていて、老人のケアが論点として浮上してきたのはつい最近のことだという。老人介護の問題に関する蓄積は、日本のほうが多い。が、こと文学研究においては、老人介護が論じられ始めたのはわが国でもつい最近のことだと思う。
 アダムズのセツルメント運動を紹介する山口論文は、デュボイス『フィラデルフィア・二グロ』への影響の指摘していて、モリスン『タール・ベイビー』での同書への言及の意味をいまごろ理解した。
 板場論文は、アンジア・イージアスカなるロシア系ユダヤ人の作品を論じている。タルムード研究をする男性には働く義務がなく、その妻は生活面その他で夫を煩わせてはならず、って伝統的なユダヤ社会は、西村賢太の世界みたいだなと思った。
 羽澄論文は、ギルマンが私財を投じて好きなことを好きなだけ書いた月刊誌『フォアランナー』について論じている。『ハーランド』は『フェミニジア』というタイトルで訳されているようだが、あまり知られていない。その続篇『我らの世界へ』も訳していいのではないか。なんだかハックスリーみたいなSFディストピア小説のようだ。
 ずっと気になっているのは、第二次大覚醒運動。個人の欠陥を強調するカルヴィニズムから、個人の成長を重視するユニテリアン派の登場が大きいだろうか。と同時に女性にも成長を促す言説、つまりは女性にも男性の議論につきあう役割を期待する傾向が生まれたということかな。子どもに教育をし、夫を正しい道へと導く家庭の天使。でもユニテリアニズムは同時に資本主義の発達をも促し、アメリカン・ドリームの形成にも寄与しただろうから、家庭における女性の役割を家庭の外へも拡大することにもなっただろう。ジェイン・アダムズの福祉事業はそうした矛盾を体現しているように思う。
 閑話解題。日本語にしてしまうと「改革者」ということになってしまうが、reformist、つまりリフォームする人。女性が家庭と結びつけられていた時代のこと。家庭をより住みやすくリフォームするところから、改革は始まる。
 蛇足。
 フラー『十九世紀の女性』は、フーリエゲーテを結びつけようとしたらしい。空想社会主義ロマン主義の結婚! 
 ハリエット・ウィルソンを論じた梅垣論文を読んで、十九世紀を「所有格の世紀」として考えてみるのもおもしろいかもしれない、と思った。十九世紀は所有権を争う事案が非常に多い。であるなら、それは十九世紀小説、ひいては十九世紀のあらゆる文字文化をレトリカルに綾なしたに違いない。などと、だらだら思う。